前回出てきたセラリウスの『大宇宙の調和』のファクシミリ版。
この際ですから(どの際?)、その細部を一瞥しておきます。
ファクシミリと言っても、電送ファックスとは(語源を除けば)無関係で、ここでいうファクシミリとは「複製本」のこと。世にファクシミリ版と称する本はたくさん作られていて、たとえば初期活版印刷の代表作、「グーテンベルク聖書」もそうです。
その現物がマーケットに出ることは極めてまれで、出ても億単位の価格になると言われていますが、こういう稀購書には、ファクシミリ版が作られるのが常で、我が国の雄松堂書店がその制作に参画した「ペルプリン本・グーテンベルク聖書」のファクシミリ版の場合、その価格は241万円なにがしだとか。
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こうなると、たとえファクシミリ版とはいえ、一般人の手に届く品ではありません(買うのは主に大学図書館でしょう)。こういうのは、現物に限りなく近づけるべく、紙も印刷も凝りに凝っているので、いきおい価格も高くなるわけですが、しかし、グーテンベルク聖書のファクシミリ版なら何でも高いかといえば、そんなことはなくて、これまでに作られたファクシミリ版の完成度や価格はさまざまだ…ということが、雄松堂のサイトには書かれています。
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グーテンベルク聖書ファクシミリのわが国での販売について
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今回取り上げたセラリウスの場合、私は以前、イギリスで作られた大英図書館本を底本にしたファクシミリ版(1987年刊行)を持っていましたが、それは紙もツルツルで、印刷もノッペリした感じで、あまり感心できぬ仕上がりでした。(「持っていた」というよりも、資料的意味合いで今も持っています。)
それに引き換え、このドイツで出たファクシミリは、紙もマットな質感の、表情のある紙で、印刷もなかなか良くできています。
(本の大きさを示すために、周囲をトリミングせずに再度掲載)
たとえば、上の扉絵のページの隅に注目。
人々が何度もめくったために手垢がついていますが、この汚れや指紋も原本そのままに、忠実に印刷されたものです。このファクシミリ版は、出版当初の鮮やかな姿を復元するのではなく、現況をそのまま再現する方針で作られたものであることが分かります。また絵の周囲には、版画を刷った際に付いた圧痕(を示す薄汚れ。実際に凹凸があるわけではありません)も見てとることができます。
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