(昨日のつづき)
私が憧れる家、それは「塔のある家」です。
たぶんその起源は、学生の頃に見た(≠読んだ)C.G.ユングの自伝にあります。
ユングは1920年代に、チューリッヒ湖のほとりに「塔の家」を建て、その後30年余り延々と増改築を繰り返しました。それは彼にとって、自己の内界の探究と並行する営みであり、多分に象徴的な意味合いがあったようで、私はその写真にただならぬものを感じたのでした。
(ユングの「塔の家」の初期形(左・1923)と完成形(1955)。ヤッフェ編『ユング自伝2』(みすず書房)より)
塔は、幽閉を連想させると同時に、外界から独立した小世界として、「隔絶しているが故の自由さ」があると思います。それは孤高の精神、精神的自立のメタファーでもあるのでしょう。
そういえば、先日京都の町中を散歩していて、麩屋町通で偶然一軒の古い建物を見かけた折も、自分の中にある「塔への傾斜」を強く感じました。それは塔状の構造を備えた瀟洒な洋館で、そこに蔦が絡まる風情が実に優美で、しばし見とれていました。(下のサイトでその外観を見ることができます。)
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レトロな建物を訪ねて:京都の革島医院
[URL]
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そんなわけで、私も塔をひとつ所有することにしました。
↑はしばらく前から私の机の上にそびえている塔です。
下から見上げると(見上げることはほとんどありませんが)、その黒々としたシルエットに圧倒されるようです。
なぜこの品が「天文古玩」に登場するかというと、これが単なる塔の模型ではなく、立派な気象観測機器、すなわち晴雨計(湿度計)だからです。
そのせいで、2階の窓には何やら回転する目盛り↓が見えますし、
湿度に応じて、1階の入口には、貴婦人の姿や「?」マークが現れたりする仕掛けになっています。
○?
とはいえ、やはりこれは理科趣味よりは、ヴンダー趣味寄りの品かもしれません。
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