『ケプラーの憂鬱』 も残すところあと30ページ。
いよいよケプラーの人生が幕を下ろす間際まで来ました。
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天王星が発見されたのは1781年で、これは周知のように ― と、ハーシェル協会員としてあえて書きますが ― ウィリアム・ハーシェルが成し遂げた偉業です。
それ以前は、誰もが水・金・地・火・木・土の6個しか惑星はないものと思っており、当然ケプラーの時代もそうでした(もっとも、地球は惑星ではないと考える人も大勢いましたが)。
ふつうの人であれば、それを自明の前提として受け入れるだけでしょうが、ケプラーは妙な問いの立て方を好む人だったのか、「惑星の数はなぜ6個しかないのか? そして、なぜ今あるような軌道間隔を描いて回っているのか?」という点にこだわりました。
ケプラーの第1法則〜第3法則は、彼の天才的な思索の結晶であり、科学史における偉大な事件と言ってよいのでしょうが、直接上の問いに答えるものではありません(問いの後段については、部分的に答えているかもしれません)。彼としては、それ以前に世に問うた『宇宙の神秘』で開陳した、多面体宇宙モデルこそがその答でした。
(↑『ケプラーの憂鬱』より)
(↑上図中央部拡大。出典=ウィキメディア・コモンズ
[URL])
「惑星はなぜ6個しかないのか?」
それはこの宇宙に正多面体が5個しかないことに対応しているのだ。
「惑星はなぜ今あるような軌道間隔を描いて回っているのか?」
入れ子になった正多面体に内接する円を描いてみよ。まさに惑星の軌道がそこに浮かび上がるではないか!
これは単なる思い付き以上のものではなく、言ってみれば一種の奇説に過ぎませんから、彼の三法則と同列には論じられないでしょうが、しかし彼はこの考えがいたく気に入っていたようです。(少なくとも小説の中ではそうです。そして著者のバンヴィルは、この説を受けて、小説全体の結構に、ある巧妙な仕掛けを潜ませているのですが、それはまた次回。)
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そういえば、以前、
ペーパー・オーラリーを紹介したときに、この宇宙モデルのペーパークラフトが、チラリと顔を出しました[
商品情報]。なんだかペラペラしていて、もうちょっと重厚さが欲しい気もしますが、ケプラーを身近に感じるには手ごろな品かもしれません。
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