今から27年前、1998年の8月11日。
イギリスの人たちは、92年ぶりに国内で皆既日食が見られるというので、大いに活気づいていました。下はそれを記念する絵皿。
このときの皆既帯は、グレートブリテン島の西南端に位置するコーンウォール地方を通過しました。皆既帯の中心に位置するセント・モーズ村では、11時11分31秒から11時13分37秒まで、2分と6秒の天体ショーが見られることを、絵皿は詳細に告げています。
この皿を作ったのは、地元コーンウォールの陶磁器メーカー「Cornish Ceramics」社で、同社の所在するセント・アイヴスの町も皆既帯の中心に近かったので、絵皿づくりにも一層力がこもったことでしょう。(ちなみに、セント・アイヴスは古くから素朴な器が焼かれた土地で、濱田庄司とバーード・リーチが日本式の登り窯を築き、民藝的作品をせっせとこしらえたのもこの町です。)
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皆既日食はいつだって「ああ!」という嘆声に包まれています。
ひとつは、神秘の黒い太陽と壮麗なコロナに対する「ああ!」
もうひとつは、雲に隠れた太陽を見上げての「ああ!」
このときも、大勢の人がコーンウォールに詰めかけ、BBCも中継のため現地入りしたのに、非情な雲は人々の口から嘆きの「ああ!」を漏らさせるのみでした。コーンウォールの人も、こんな記念のお皿まで作って楽しみにしていたのに、まったく残念なことでした。
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雲は勝手気ままな気まぐれ者。
しかしその雲を生み出し、動かしているのは他ならぬ太陽ですから、太陽がそれを望んだのだ…と思って、ここは納得するしかないかもしれません。
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