土御門、月食を予見す(後編)
2024-06-10


 寅の六刻 4:26〜4:40 
 寅の七刻 4:40〜4:55 
 寅の八刻 4:55〜5:00

   ★

こうしてようやく、上記の月食記載の意味が理解できます。
すなわち、「月食五分〔食分0.5〕。寅の一刻〔3:14〜3:29〕東北の方より欠け始め、寅の八刻〔4:55〜5:00〕甚だしく、卯の六刻〔6:26〜6:40〕西北の方終わり」です。

これがどの程度実際を反映しているか?
国立天文台の日月食等データベースに当たると、このときの月食(部分食)は、以下の通り3:45に始まり、4:52に最大食となり(食分は0.336)、5:59に終わっています。

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比較してどうでしょう? 食甚の時刻および食の開始と終了の方位はほぼ正解ですが、食分を実際よりも多く見積もった関係で(つまり、月がもっと地球の影の中心に近い位置を横切ると予想したため)、食の始まりと終わりが前後に30分ほど間延びしています。この予測を以て、「それでも、それなりに当てたんだからいいじゃないか」と言えるかどうか?

   ★

西洋天文学を採り入れて宝暦暦を改良した「寛政暦」の場合と比較してみます。

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手元に天保8年(1837)の暦があります。

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年号は天保でも、当時はまだ寛政暦を使っていました(さらに改良を加えた「天保暦」は、天保15年=1844から施行)。

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「月帯食(げったいしょく/がったいしょく)」とは、月が月食の状態で昇ったり沈んだりすること)

この年は3月17日(グレゴリオ暦では4月21日)に皆既月食がありました。
暦には、寅の三刻【3:43〜3:58】左の上より欠け始め、卯の二刻【5:29〜5:43】皆既〔みなつき〕て入【=そのまま沈む】」と書かれています。

上と同じように、国立天文台のデータベースを参照すると、

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