古典とワクワク
2021-01-11


コロナ禍もすでに1年余りが経過し、これからは「去年の今頃は何があったかな?」と振り返るのが日課になりそうです。ちなみに去年の1月11日は、中国で<原因不明の肺炎>による初の死者が出た、と報じられた日でした。

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それを思うとずいぶん昔のことですが、今から7〜8年前の新聞で、興味深い記事を読みました。ユタ州の地方紙「ソルトレイク・トリビューン」の2013年2月21日号に掲載されたものです(記者はSheena McFarland氏)。

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Old book collection a thrill for astronomy enthusiasts
 ― University of Utah's J. Willard Marriott Library featured original editions of books that laid the foundation for astrophysics.

見出しは、「古書の山に天文ファン興奮――ユタ大学のウィラード・マリオット図書館が、宇宙物理学の基礎を築いた書物を原書で公開」といった意味合いでしょう。

地元出身の富豪、ウィラード・マリオット氏(日本にも進出しているマリオット・ホテルグループの創始者らしいです)の寄贈によってできた、ユタ大学の専門図書館が、天文学の古典を公開し、地元のアマチュア天文家が、それに興奮して見入った…というのが記事のあらましです。

私が興味を覚えたのは、私の知るアマチュア天文家は、普通そういうものに関心を示さないイメージがあったからです。大抵の天文ファンは、望遠鏡で星を眺めるのは好きでも、昔の天文学の歴史には興味が薄いし、たまさか歴史に興味を持つ人がいても、古書そのものには関心を持たない…というイメージがありました。でも、実はそうでもないのかなと、この記事を読んで考え直しました。

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図書館に並んだのは、たとえばニュートンの『プリンキピア』の初版(1687)です。
以下、記事を部分訳してみます(かなり適当訳です)。

 「天文家にとって『プリンキピア』はバイブルなんです」と、パトリック・ウィギンズは言った。彼はスタンズベリーパークの住人で、ソルトレイク天文協会会員を中心とする一行15人のツアーを企画したアマチュア天文家だ。「これは実に感動的な経験です」と、本を手にしながら彼は述べた。

 展示されている本の年代は、最も古い西暦800年代から、1900年代初頭のアインシュタインの著作にまで及ぶ。39冊の本の大部分が初版本で、オリジナルの装丁のまま、何百年も経た今でも完全な状態で読むことができる。

ここに並ぶのは、ほかにジョバンニ・パオロ・ガルッチの星図集『世界劇場』(スペイン語版、1607)とか、アンドレアス・セラリウスの美麗な『大宇宙の調和』(1661)とか、ガリレオの『天文対話』(1632)などで、いずれも貴重な歴史の証人です(なお、上でいう「西暦800年代」の本は原書ではなく、複製本のようです)。


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