古典とワクワク
2021-01-11


 一行のうちの2人、トゥーイル在住のテラとスティーブのペイ夫妻は、ウィギンズから「関心があればぜひ」とメールで誘われて参加した。スティーブは言う。「歴史上、科学思想のターニング・ポイントとなった本があります。そうした本を眺め、手に取ることができるなんて、生涯で一度きりの経験でしょう。」

年間約40のグループが、学外からこのマリオット図書館の貴重書コレクションを見に訪れる。その財源は税金と個人的寄付であり、誰でも特定の本をリクエストし、書庫から司書が運んでくればすぐに、それを手に取って読むことが出来ると、貴重書担当のポウルトン主任学芸員は言う。

 ソルトレイクに住むアマチュア天文家のフレッド・スワンソンは、これほどの貴重書を前に喜びを隠せない。スワンソンは言う。「これらは西洋科学を作り上げた資料の一部に他なりません。それらを見ると、本当にワクワクします。私はこれまでずっと天文学と物理学に関心がありましたが、私が使った教科書はすべて、ここにあるケプラーやニュートンやアインシュタインの著作に基づいて書かれたんです。こんなにワクワクすることはありませんよ。」

   ★

皆さん、至極穏当でまともな意見だと思います。
モルモン教の根付いた土地ですから、訪問する人もどちらかといえば善男善女タイプの、篤実な人が多いのかもしれず、平均的アメリカ人の感性とはずれている可能性もありますが、それにしても市井の人が、こういう思いで科学の古典に接するのは、間違いなく好いことでしょう。

日本だったら…と当然考えますが、実際のところどうなんでしょう?
たぶんお勉強気分で、神妙な面持ちで眺めることはするでしょうが、あまりワクワクやドキドキはないかも。

同じ眺めるのでも、「よそながらに眺める」のと、「自分に結びついたものとして眺める」のとでは天地雲泥の差があって、後者の感覚を持てるかどうかが、教育の成否を測る物差しではないか…と、何だか我ながら説教臭いですが、そんな風にも思います。


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