1912年、英国の夜空を眺める(後編)
2020-09-20


(昨日のつづき)

禺画像]

こちらは1912年2月1日、午後10時の南の空。
ロンドンのシンボル、ビッグベンの脇にかかるウエストミンスター橋から見た光景です。この橋は東西にかかっているので、(街の明かりさえなければ)真北と真南の空を見上げるには、恰好のポイントです。

禺画像]

この本が、わざわざ「1912年用」と断っている理由がこれです。
この星図は恒星以外に、月や五大惑星の位置を計算して印刷してあるのがミソ。

周知のように、月や惑星は星座の間を常に動いているので、通常の星図には載っていません(というか、載せようがありません)。でも、著者ブレイキーは、1912年の毎月1日に限定することで、強引にそれを載せています。本書は天文の知識がまったくない人でも、空を気楽に見上げてもらえるよう作った…と、解説ページの冒頭に書かれているので、これもそのための工夫でしょう。

禺画像]
(9月の星図の対向ページ(部分))

星図の隣頁を見れば、毎日の月の位置や、8日ごと(毎月1、9、17、25日)の惑星の位置がくわしく載っているので、上級者はそれを参照すればよいわけです。(要するに、この本は天文年鑑と星図帳を兼ねたものです。)

禺画像]

ここで、もう一度9月1日の空に戻って、角度を変えて撮ってみます。
この角度で見ると分かるように、正面から撮ると黒っぽく見える星々は、実際はすべて金色のインクで刷られています。

金の星と青い夜空の美しいコントラスト。
テムズ川に映る星明りと、地上の夜景に漂う詩情。
青い空にぽっかりと浮かぶ白い惑星の愛らしさ。
石版刷りのざらりとした懐かしい質感。

本当に美しく、愛らしい本だと思います。

   ★

ここで改めて著者・ブレイキーについて述べておきます。彼の名前は、英語版Wikipeia【LINK】に項目立てされていました。

禺画像]
(Walter Biggar Blaikie、1847〓1928)


続きを読む

[天文古書]
[星図]

コメント(全3件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット