天文アンティークの広大な世界
2019-03-11


3.11。今日は職場に弔旗が掲げられました。朝からの雨も上がり、薄日に照らされて、ポールの先で黒い布きれが揺れているのを窓越しに眺めていたら、窓に一匹のカゲロウが止まっているのに気づきました。それは命の儚さの象徴であり、刹那に「ああ、結局誰もかれも、みな死んでしまうんだなあ…」と思いましたが、でも風に吹き飛ばされないよう、ガラスに必死にしがみついているその姿を見るにつけ、「それにしたって、やっぱりこうして生きていくしかないんだな…」とも同時に思いました。

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さて、天文アンティークを取り上げて間口が広い…というと、この「天文古玩」もそうですが、それ以上に間口の広いところは当然たくさんあって、やっぱり世間は広いです。

たとえば、「History of Astronomy」(@ HistAstro)というツイッターアカウントが、その一例。フォロアー数2万を超える有名どころですから、ご存知の方も多いでしょう。
アカウントの主はVoula Saridakisさんという女性で、本業はシカゴのサイエンス・インダストリー博物館で学芸員をされている方です。


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プロフィール欄に「Multidisciplinary & multicultural history of astronomy」とあるとおり、さまざまな分野・地域・文化を往来しながら、天文学史のあらゆる事象を取り上げているアカウントです。2015年3月の開設以来、この4年間でツイート数は1万を超え、まあ日常瑣事をつぶやくだけなら、いくらでもツイート数は伸びますけれど、すべて中身のある話題で、このツイート数はすごいです。

私がサリダキスさん(ちょっと変わった姓ですが、ギリシャ系かも)のツイートに、一方的に親近感を覚えるのは、彼女がやっぱりモノに強く惹かれているように見えるからです。これは学芸員という仕事柄もあるでしょうし、ツイッターという媒体の特性にも因るのでしょうが、サリダキスさんが天文学史の話題を語るとき、そこには常に形あるモノが伴っています。ですから、そのツイートをさかのぼれば、広義の天文アンティーク総まくりに近く、これは好きな人にとって実に頼もしく、且つありがたい話です。

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ちょうど一昨日がアカウント開設4周年で、それを記念して、直近1年間の「トップ10ツイート」が発表されていました。その顔ぶれは以下のとおり。

1 金・赤・青で彩色された、15世紀の医師の懐中暦に描かれた食現象のダイアグラム
2 サクロボスコ著『コンプトゥス』に描かれた月相図(1230〜1399年)
3 ジャン・マルティノ作の天球儀(1609年)
4 医神アスクレピオスの胸像を刻んだビザンツのホロスコープリング(4世紀)
5 「賢者の石」の異なる錬成段階に適合した占星図(15世紀)
6 真鍮球に銀で星を象嵌したインド−ペルシャ製天球儀(1700年頃)
7 ドイツのロストックに立つ聖マリア教会の天文時計
8 紀元前190年3月14日の日食を記録した楔形文字粘土板

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