中国星座のはなし(前編)
2019-02-09


今週は立春を迎えましたが、東日本は雪模様で、なかなか寒いです。

ここで正月から持ち越しの課題を取り上げます。
それは中国星座の「奎(けい)」の別名が、今年の干支と縁のある「天豕」「封豕」だと知って、そこに何か面白おかしい星座神話があるのか調べようというものでした。具体的には、大崎正次氏の著書、『中国の星座の歴史』(雄山閣、1987)に目星を付けて、その中に答を探そう…というのが、宿題の中身。

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結論から言うと、大崎氏の大著をもってしても、その答は依然不明です。

同書で「奎」に関する説明は、「『説文』に「両髀之間」とある。すなわちまたぐら、ももとももの間をいう。ひとまたぎの長さをさすこともある。周代の3尺にあたる。『初学記』文字に引用する『孝経援神契』の注に、屈曲した星座全体の形が文字の形に似ているところから、学問の神として信仰されたとある」云々というのみで(p.150)、豚との関係を示す記述はさっぱりでした。

しかし、私はこの機会に、奎と豚の関係よりも、いっそう本質的なことを学んだ気がするので、当初の予定とはまるで異なりますが、そのことをメモ書きしておこうと思います。

   ★

 「乙女カリストは、ゼウスに見そめられて、息子アルカスを産むが、嫉妬深いゼウスの妃ヘラによって熊の姿に変えられ、森をさまよう運命となった。その後、成長した息子と森で出会ったカリストは、嬉しさのあまり息子を抱きしめようとするが、そうとは知らぬアルカスは、母に向かって弓矢をキリキリと引き絞る。あわや…というところで、二人の運命を哀れんだゼウスにより、母子は天に上り、ともに熊の姿をしたおおぐま座、こぐま座となって、仲良く空をめぐることとなった。」

…「星座神話」と聞くと、真っ先に思い浮かぶのはこんなエピソードです(上の話には異説も多いです)。あるいは、「働き者の3人兄弟が、怠け者の7人姉妹を追いかけているうちに、神様によってオリオンの三ツ星とプレアデスに姿を変えられた」というアイヌの物語とか。

   ★

で、私は中国の星座も、何となく似たようなものだろうと勝手に思い込んでいました。
つまり、ギリシャやアイヌの神話とパラレルな、星空を舞台とした豊かな中国神話の世界が、そこあるような気がしていたのです。(天の川のほとりにたたずむ牽牛・織女の昔話は、親しく耳にするところでしたから、他にもいろいろエピソードがあって当然という思いがありました。)

でも、実際の中国の星座世界は、ギリシャやアイヌのそれとは少なからず異質なものです。そもそも、中国では星と星を結んで、それを何かの形に見立てるということが、ほとんどなかった…というのが第一の発見です。さらに星座がその身にまとう物語性が希薄だった…というのが第二の発見。

前者について、大崎氏はこう述べています。


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