(昨日の続き)
月長石について「おや?」と思ったのは、先に引用した、加藤碵一・青木正博両氏の『賢治と鉱物』(工作舎、2011)に、以下の記述を見つけたことでした。
「月長石/ムーンストーン」は、ラテン語のselenites の英訳です。現在の鉱物名としての利用は、1780年にドイツのウェルナーが、光沢のある長石を Mondstein (直訳すれば「月石」)としたことに由来します。(p.188)
セレニーテス(羅)といい、モントシュタイン(独)といい、またムーンストーンと言い、言葉の意味としては、すべて「月の石」ですから、何も不思議ではないのですが、ここで気になるのは、このラテン語の称です。
selenites(セレニーテス)を英語化すれば、すなわち selenite(セレナイト)となります。でも、少なくとも現代の用法では、セレナイトは「石膏(Gypsum)」、特に透明な板状で産出する「透石膏」を指す名称です。
(かつて「鉱物Bar」で購入した透石膏の結晶)
鉱物学的には、片や珪酸塩鉱物の長石、そして片や硫酸塩鉱物の石膏と、まったく別種なのでしょうが、ひょっとしたら近代鉱物学の誕生以前、両者が言葉の上で混用されていたのかな?…と思ったのが、すなわち「おや?」の中身です。
そして、日長石の別名が、太陽石(ヘリオライト)なら、月長石の別名も月石(セレナイト)という風に、たとえそれが歴史的混用にせよ、ぜひ対が取れていてほしいと思いました。
(『ビジュアル博物館25 結晶と宝石』(同朋舎、1992)より、ムーンストーンとサンストーン)
もちろん、加藤・青木両氏に、セレニーテスとセレナイト、そしてムーンストーン相互の関係を詳しくお聞きできればいいのですが、なかなかそんな機会も得られませんから、少し自助努力をしてみます。
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まずは手近なところでWikipediaから。
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