空の旅(12)…18世紀の天文ゲーム
2017-05-01


昨日につづき、今日もアーミラリー・スフィアの姿が見えます。

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これが何かというのは、その脇のカードに書かれている通りです。

「1796年、ロンドンで出たカードゲーム、『The Elements of Astronomy & Geography』 。ゲーム形式で天文学と地理学の基礎を学べる品です。時代が19世紀を迎える頃、市民社会の訪れとともに、天文学への関心が急速に高まりを見せました。」

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『パリス神父作、精刻美彩の40枚の手札を用いた天文学・地理学入門』

フランス革命後の新しい世界。
それは教育による立身が可能な世界であり、「教育は財産」という観念が普及した時代です。ただし、国民皆教育制度が成立するのは、欧米でも19世紀後半ですから、それまでは家庭教育のウェイトが大きく、そのため教育玩具の需要が高まった時代でもあります。

天文学や地理学は、その恰好のテーマであり、この品もその1つです。

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各カードは、表面が図版、その裏が解説になっています。
内容はご覧の通り、かなりお堅い感じで、主に球面幾何学に関する解説が延々と続きます。

果たして、これでどんなゲームを楽しんだのか、ルール解説がないので、ちょっと想像しにくいのですが、お父さんが食後のテーブルで、こういうものを使って親しく語りかけてくれるだけでも、子どもたちにとっては、嬉しく楽しい経験だったかもしれません。


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この手の品は、イギリスのみならず、国を越えていろいろ出ています。
上の左側のカードは、昨年夏に池袋のナチュラルヒストリエで開催された「博物蒐集家の応接間――避暑地の休暇 旅の始まり」で展示した、1803年にフランスで出た天文カードゲーム。

   ★

現代に通じる、「ホビーとしての天文趣味」が成立したのは、ちょうど世紀をまたぐ1800年前後のこと…という仮説を私は持っています。


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