空の旅(3)…カタラン・アトラスの世界
2017-04-15


「空の旅」のアイデアを考えたとき、最初に思いついたのは、「カタラン・アトラス(カタロニア地図)」と呼ばれる、中世の世界地図を背景に、天文学の歴史を物語ることでした。

カタラン・アトラスは、1375年にカタロニア(カタルーニャ)で製作されました。
当時知られた「全世界」を詳細に図示したもので、その範囲はヨーロッパを超え、アジア世界を横断し、極東の島々にまで及びます。地図上には多くの城が聳え、偉大な王の姿が描かれ、海には船が浮かび、ラクダに乗った隊商が陸地を横切っています。

これこそ「旅」をテーマにした展示に相応しい品。

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(カタラン・アトラスに描かれたペルシャ湾をゆく帆船)

さらに、その絵筆は地上世界を超えて、巨大な天球までも描破しており、これは通常の「世界地図」の枠に収まらない「宇宙地図」と呼ぶべきものですから、ぜひ「空の旅」の背景に据えたいと思いました。

   ★

カタラン・アトラスは、高さ65cm、幅300cm もある巨大な横長の地図です。
元は50cm 幅×6枚、現況はさらに半幅の25cm 幅×12枚に切断されて、木製パネルに貼り付けた屏風状の形態で、フランス国立図書館に所蔵されています。

有名な地図なので、これまで何度も複製が作られており、私が今回並べたのも、2000年にバルセロナで出版された、そうした原寸大複製の1つです。

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オリジナルと同じように、25センチ幅の縦長の地図が2枚見開きで装丁され、全部で6分冊になっています。

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第1分冊は、地図の左端に当る部分。カタロニア語によって、当時の天文学や占星術の知識が記されています。まさに、この図が「宇宙地図」であるゆえんです。

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そして第2分冊の天球図を経て、第3分冊以降の世界地図へと画面は続いていきます。

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(この図は、地球から恒星天に至る同心球状の宇宙構造と、黄道十二宮、そして1年間の暦を表現していると思うのですが、詳細は不明。オリジナルの金彩が、金の特色刷りで美しく再現されています。)

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