ルネサンスの天文学者に捧げるカード
2016-08-19


三角帽子をかぶった変な天文学者のイメージは、これまでたびたび取り上げました。

■カリカチュアライズされた天文学者のルーツを探る(前編)(後編)

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「天文学者」と題された下の絵は、それらに比べると史実に忠実な感じがします。

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(1930年代に出たテンゲルマン・コーヒー(Tengelmann Kaffee)のおまけカード)

しかし、それはコスチュームに限っての話で、その行動はいっそう奇妙なものです。

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彼は四分儀らしきものを右手に持って星を見上げ、左手ではディバイダを操作し…
実際こんな覚束ない手つきで星の位置測定ができるはずはありませんが、それはご愛敬でしょう。

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(奥のギザギザ円盤はおそらくノクターナル(星時計)。手前のボード状の道具は不明)

それよりも、ここでは天文学者の前に鎮座する、巨大な多面体の存在が注目されます。この20世紀の絵師は、一体なぜこんなものを、ここに描き込んだのか?

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裏面の解説を読むと――と言いつつ、ドイツ語と髭文字のせいで文意が判然としないのですが――古来、天文学者たちは、この無限の宇宙を律する法則を探るために、非凡な努力を重ねてきたこと、そしてその代表選手が、クザーヌス(1401−1464)であり、プールバッハ(1423−1461)であり、さらに、レギオモンタヌス(1436−1476)を経て、コペルニクス(1473−1543)、そして「なかんずく(vor allen)」ケプラー(1571−1630)へと至る系譜であった…と、この短文の筆者は述べているようです。

そんなわけで、ここではケプラーが最大の功労者として名指しされているので、この多面体(正二十面体)も、ケプラーの多面体宇宙モデルをシンボライズし、彼に捧げているのではないか…と想像されるのです。

   ★

それにしても、ここに出てくる人たちは、とてもコーヒーのおまけカードとは思えない渋い人選です。いかにもドイツらしい、重厚な思索の跡をしのばせますが、ひょっとしたら、ティコ・ブラーエやガリレオを無視したのは、単純にドイツ(ないしドイツ系)の人物を連ねて、国威発揚を狙っただけかも。

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