さらに同時代のフランスで出た、これまた美しい星景画、アメデ・ギユマンの『Le Ciel』を知ったのもこの本を通じてです。
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星図の黄金時代とも言える17〜18世紀の、美麗の極ともいえる豪華な彩色星図も、もちろん魅力的ですが、ダンキンやギユマンに代表される、19世紀の天文趣味の世界には、それらとはちょっと違う手触りがありました。そして自分にとっては、より懐かしい、いわゆる「魂のふるさと」的なものを、そこに感じたのです。
今にして思えば、それはジュール・ヴェルヌ的な科学世界なのでしょう。さらに、それ以前から愛読していた、たむらしげるさんのフープ博士の世界が、そこに現実にあるような気もしました。
その頃は、まだリアル天文趣味にはまっていたのですが、私の場合、天文趣味は子供の頃の思い出と固く結びついており、それ自体「懐かしい」ホビーでした。そして、その懐かしさをずうっと延長した先に、19世紀の天文趣味の世界があるんじゃないか…ということも、『天球図の歴史』を読んで感じました。
その予感は当たっていて、その方面の探求の先に、アラン・チャップマン氏の『ビクトリア時代のアマチュア天文家』との出会いもあり、そうした世界を渉猟しつつ今に至っているわけです。
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皆さんにも覚えがあるでしょう。「運命的な出会い」というのは確かにあるものです。
そのときには分からなくても、後から振り返ると「確かにあれがライフコースの分岐点だった」と思えるような出会いが。
(郷愁をふりまきつつ、この項つづく)
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