(パーシヴァル・ローエル Wikimedia Commonsより)
パーシヴァル・ローエル(Percival Lowell、1855−1916)の名は、火星、冥王星と分かちがたく結びついています。前者は筋金入りの運河論者として、また後者はその発見プロジェクトを強力に推進した者として。
彼の死後(1930年)に発見された新天体が「Pluto」と命名され、PとLを組み合わせた惑星記号を与えられたのも、彼のイニシャルにちなむ…というのは有名な話です。
(冥王星の惑星記号)
彼は良くも悪くも夢と信念に生きた天文家だったと思います。
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さらにローエルは知日家として知られ、前後5回にわたって明治の日本に滞在しました。その縁から日本には「日本ローエル協会」という団体があり、ローエルの顕彰や研究が続けられています。
彼の日本への興味は、もっぱら文化や民俗に対する関心に基づくもので、その方面の著書は、『極東の魂』、『能登 ― 人に知られぬ日本の秘境』のタイトルで邦訳が出ています。さらに、これまで邦訳がなかった主著 『Occult Japan or the Way of the Gods』(1894)も、ついに『神々への道―米国人天文学者の見た神秘の国・日本』(国書刊行会)として、今年の10月に出版され、さらに本書に宗教民俗学的解説を加えた『オカルト・ジャパン―外国人の見た明治の御嶽行者と憑依文化』(岩田書院)も時期を同じうして出るなど、没後100年を控えて、今ちょっとしたローエル・ブームの様相を呈しています。
『神々への道』を翻訳された日本ローエル協会の平岡厚氏から、同書をお送りいただき(私個人あてではなく、日本ハーシェル協会にご恵贈いただいたものです)、私もさっそく拝読しました。
この本は、神道系教団(神習教)や日蓮宗の儀式における憑依現象(神がかり状態)や変成意識状態を、参与観察をまじえて調査研究したもので、その分析の道具立ては、当時の心理学や生理学的知見ですから、いわゆる「オカルトもの」ではありません。
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ローエルのこの本を持ち出したのは、このところ記事の流れがフランスづいていたからです。…というと、いかにも唐突ですが、この『神々への道』には、フランスに対する言及がいくつかあって、そのことをふと思い出したからです。
フランスといえばドイツと並ぶヨーロッパの大国であり、海峡をはさんでイギリスと対峙する国。歴史を顧みればフランク王国の一角として、まあ「西洋そのもの」と言ってもいい国だろうと思います。
ところがローエルは、フランスを西洋世界における異端児と見なしている節があります。たとえば、彼は「日本人は極東のフランス人である」という警句を引用していますが(邦訳192頁)、これは裏返せば「フランス人は西洋の日本人である」ことを意味しており、その精神構造の特殊性をほのめかす言い方です。
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