重く響く鉄輪〔クランク〕とともに闇を突き進んでくる燈火は、地下道の黒ずんだ拱門〔アーチ〕を俄に明るく照らしだした。正面に見えるプラネタリウムの広告燈〔ネオン〕が、ぱッと黄昏〔たそがれ〕のように染まる。銅貨と水蓮がプラットフォームのこの地点を好んでいるのは、ひとえにこの広告燈〔ネオン〕を見たいがためである。南十字の煌〔かがや〕く夜天〔よぞら〕を背景に旧式の投影機を描いた広告燈〔ネオン〕は、もう相当に古びていたが“天象儀館〔プラネタリウム〕”と書いてあるところなど、少年たちはおおいに気に入っていた。(pp.12-13)
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前にも書きましたが(
[URL])、この古風な広告燈のイメージは、戦前、東京・有楽町にあった「東日天文館」(1938年オープン。戦災で焼失)のパンフレットに拠るものと思えてなりません。
(天象儀館の文字が、いかにもそれらしい1940年版のパンフ)
(パンフの裏面。「年中無休 晴雨不論」と、わざわざ断っていますが、当時は「今日は雨だからプラネタリウムも休みだろう」と思う人がいたんでしょうか?)
(この項つづく)
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