隣室には古風な行灯の下、老人のいう「謎」が行儀よく並んでいた。
「このカードを思い出せてくれたのは、石津…あの男でして。」
石津と呼ばれた例の書生風の男が、老人の言葉を引き取って説明を始めた。
「私は大先生から常々珍奇な品を探す役目を仰せつかっているのですが、先日ネットオークションで不思議なカードを見つけ、これはと思い、すぐお知らせしたのです。しかし、大先生は私の説明を聞かれて、それならばもう持っておると…見比べたら確かに同じものでした。」
「さよう。しかし、同じようでいて、少し違うところもありましてな。当家のカードは、ご覧のように50枚から成っております。何の手違いか、同じカードが1枚重複しているので、枚数は全部で51枚ありますが、本来は50枚で一揃いなのでしょう。しかし、石津が見たのは97枚だったそうで。」
「はい、売りに出ていたのは全部で97枚でした。でも、そこには同じカードが2枚ずつ含まれていましたから、元は50種類のカードが1ペアずつの計100枚セットだったように思います。出品者も『カードが全部揃っている保証は無い』と言っていましたから、おそらくは…。」
「そんなわけで、50枚で遊ぶ場合もあれば、100枚で遊ぶ場合もあったのかもしれず、ひとつその点も念頭において、お考えいただきとう存じます。」
カードはざっと種類別になっていた。
絵入りカードには、老人が述べたように物質名が印刷されていた。
「水素と水…、元素もあれば、化合物もある。」
私の傍らで、1人の男が声を出した。
「ClとOは『塩素』、『酸素』ではなく、『塩化』、『酸化』と書かれていますね。」
と別の女がつぶやいた。
私も思いつきで言葉を発した。
「このアルゴンは1894年に発見された新元素で、電球への封入に応用されたのは、それから20年ばかり後のはずです。このカードはその新技術を誇らしげに表現しているのでしょう。ご亭主の言われる通り、この品は大正頃のものと見てよいのではないでしょうか。」
老人はそれらの言葉にいちいち頷きながら、さらに先を促した。
「そしてこちらが化学式で…」
(↑2段目左端と最下段、CH2のカードが重複)
「ここまでは、何とはなしに意味が分かるのですが、こちらの数字とプラス・マイナスのカードは、はて何でしょうな?」
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正直、化学の素養がないので、私には皆目わかりません。
ぜひ謎を解いてくださいませ。重ねてどうぞよろしくお願いいたします。
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