星と荒事…團十郎逝く
2013-02-11


ジョバンニの話題は小休止。

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十二代目・市川團十郎(以下、団十郎)、本年2月3日寂。享年66歳。
歌舞伎役者の彼が、天文趣味人であったことは、わりと知られているエピソードのようで、ウィキペディアにもチラッと書かれています。

団十郎さん…という呼び方は据わりが悪いので、ここでは敬称を略しますが、その団十郎が天文に目覚めたのは、小学生の頃の火星大接近がきっかけだそうです。調べてみると、これは昭和31年(1956)のことで、最接近は9月でした。ときに団十郎は小学4年生。もちろんまだ「団十郎」を名乗る前ですが、彼はすでに初舞台を済ませ、歴とした役者の一員でした。このとき彼は父親(十一代目団十郎)にせがんで、口径5センチの屈折望遠鏡を買ってもらい、以後天体観測に励むことになります。

翌年(1957)は宇宙時代の画期、スプートニク打ち上げの年。ライカ犬が宇宙に飛び立ち、西側世界に衝撃を与えたのはこの時のことです。さらに肉眼で観測できる彗星が2個出現(アランド=ローランド彗星、ムルコス彗星)し、こうした出来事にあおられて、団十郎少年の天文趣味はますます熱を帯びた…のだと想像します。

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団十郎の訃とともにその天文趣味を耳にし、かつて読んだ雑誌の記事を思い出しました。それは2009年の世界天文年を記念して、雑誌「東京人」が8月増刊号として、三鷹の国立天文台特集を組んだ折りのものです。

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その中で団十郎は、国立天文台を見学しながら、当時の台長・観山正見(みやましょうけん)氏と対談しています(名前から想像される通り、観山氏の実家はお寺だそうで、記事では団十郎と仏教的宇宙観の話題で盛り上がっています)。
実は、上で書いた団十郎と天文趣味の出会いのエピソードも、この対談記事が元になっているので、改めてご本人の言葉を引いておきましょう。

禺画像]

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団十郎
 小学生の小学生の頃に火星の大接近がありましてね。
ふだん父は物をあまり買ってくれなかったんですが、「望遠鏡が
欲しい」と言ったら「いいよ」と、口径五センチくらいの屈折望遠鏡を
買ってくれたんです。それを一生懸命覗いたら、火星もね、
赤っぽいものがけっこう大きく見えたんですよ。父も息子に
買わせて自分が覗きたかったんでしょう、望遠鏡を合わせると、
「どれどれ」なんて庭に出てきて見ていました。
 ちょうど、ソ連のスプートニク1号、アメリカのエクスプローラ1号
という人工衛星が打ち上げられて、地上からでも見えると言われて
いた頃です。

観山
 子ども時代から、今も天体観測を続けられているわけですね。

団十郎
 ええ。月日が経って、また火星の接近があったので、
さらに大きな口径の望遠鏡を買ったんですが…以前に見た火星よりも
小さいんです。つまり性能がよくなって、ぼやけていたものが、
はっきり見えるようになったんですね(笑)。その代わり表面の模様は、

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[天文趣味史]

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