曼荼羅から一転してコミックの話題です。
最近、朝日新聞の読書欄で紹介された『シリウスと繭』の第1巻。
作者の小森羊仔(こもりようこ)さんにとっては、初の単行本だそうです。
天体観測の場面が出てくるというので、この本を手にとってみました。
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(コミックカバーより。左から繭子、ハル、メグ)
物語の舞台は、坂が多く、星がきれいな町です。主人公は高校3年生の永野繭子。移りゆく季節の中で、彼女とクラスメートの北見晴(ハル)、そして繭子の親友・笹原芽美(メグ)の交感が、静かに綴られていきます。
ハルは、ときどきポータブル望遠鏡をかついで星見に行く天文好きの少年で、将来は自分の手でプラネタリウムを作ることを夢見ています。その夢は、幼い頃に亡くした父親の思い出とつながっており、そのことが彼のキャラに、ちょっと影のある、無口で大人びた性格を付与しています。
第1巻のストーリーは、高校3年の夏から始まり、翌年の早春、3人がそれぞれ別々の進路に踏み出すところで終わります。
ハルに苦手な勉強を教えてもらったことから、彼を意識するようになった繭子(そのときハルから恒星シリウスの話を聞き、彼女はハルとシリウスを重ねて見るようになります)。以前からハルに思いを寄せていたメグは、二人が徐々に距離を縮めていくのを、複雑な思いで眺めます。3人とも基本的に「いい人」なので、そこに切ない心のあやが生じます。
要は淡い恋物語なんですが、何なのでしょう、この全編を満たすかなしさは。
繭子とハルの恋は、時間とともに進展するのですが、その先には高校卒業という「終末」が控えており、そこに一種の無常感が漂っている感じです。
作中での繭子のモノローグ。
退屈な授業や
他愛のない会話
わずらわしい校則
夏の暑さ 冬の寒さ
いつかは忘れてしまう時が来る事を
きっと心の何処かで知りながら生活していた
…いつか全てと「さよなら」をする時が来るという事も
思うに、これは人生そのものです。
仮に繭子とハルの2人が結ばれ、長く人生を共にすることになったとしても、それでハッピーエンドではなくて、やはりいつかは終わりが来る。人はみんなそのことを知りながら、気付かないふりをして生きているのだとも言えますが、この作品はそれを可視化したものだという気がします。
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「最初に別れありき」というテーマは、同じ作者の短編「きみが死んだら」では、より徹底しています。そこで恋人たちに残された時間は、わずかに3日間。それがなぜかは、作品↓をお読みいただきたいですが、そこでも主人公の女性は、彼氏と身体を重ねながら、心の中で呟きます。
残されている寿命が あと60年あるとしても
わたしはそれを短過ぎると駄々をこねる
残りが3日でも 60年でも
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