デロール、ミレニアム回顧
2009-04-15


禺画像]
ちょっと情報が古くなってしまいましたが、「芸術新潮」の4月号の特集が「パリと骨董」で、その中にデロールの紹介記事がチラッと(記事1ページに写真2ページ)出てきます。

それを読んで、“ああそうだったのか”と知ったことがありました。
記事中、デロールの歴史を紹介する中で、

「(…)100年まえは社員が300人いたが、いまは10人しかいない。2001年、倒産寸前だったデロールを大手の園芸品店が買収、店内を改装して雰囲気をあかるくした。」

というくだりです。

デロールの苦戦については昔、BRUTUS(97年5月1日号)にも書かれていて、そこでは

「2年前〔1995年〕、この老舗が売りに出されているという噂が広まった。(…)/自然保護運動の高まりやワシントン条約の締結で、動植物を自由に取り扱えなくなったのも大きな理由のひとつだが、一部の専門家やマニアしか対象にできなかった老舗の古い経営体質にも敗因はあったようだ。(…)老舗の運命は、パリジャンの興味を大いに掻き立てる話題だった。/そこに颯爽と名乗りを上げたのが、30代の若き骨董商リシャール・マロル。商品もスタッフも職人も164年の伝統もろとも引き受けた彼は、老舗の威厳はそのままに、店内の古い空気を入れ替えて新しいコンセプトで店の立て直しを図った。」

と書かれていました。

なるほど。とすると、颯爽たるマロル氏の奮戦も空しく、デロールは今世紀初頭に2度目の危機を迎えていたと。ということは、私がデロールを知るきっかけとなった、今森光彦さんの本『好奇心の部屋デロール』は2003年に出ているので、マロル氏からさらに園芸品店に経営が移った後の姿だったわけですね。

「芸術新潮」の記事は、ラオラさんというデロールの店員さんの声を紹介しています。

「いまのデロールはすこし商業的なので、僕がまたむかしのように、学術的な陳列にかえてゆくよ、とラオラさんは語り、ほほえむ。文化や伝統というのは、たとえ一度とだえても、こうしてうけつがれるものなのだろう。」

昔のデロールと今のデロールは、おそらくかなり異質な空間になっているんじゃないかと思うんですが、度々の経営危機と試行錯誤を経て、再び往時の姿に帰りつつある(らしい)のは、素敵に頼もしい気がします。博物学の聖地として、この先も長く君臨してほしいものです。
[博物学]
[ヴンダーショップ・イベント]

コメント(全10件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット