ヴァーツラフ王のいとも豪華なる天文書
2025-11-04


前回に続いて、ファクシミリ版から「美しい天文古書100選」の候補を見てみます。

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今回眺めるのは、現在、ミュンヘンのバイエルン州立図書館が所蔵する、『ヴァーツラフ4世のための天文選集』
ご覧のとおり巨大な本で、表紙サイズは縦50cm近くあります。

例によって Facsimile Finder の該当ページにリンクを張っておきます。

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この本を献じられたのは、ボヘミア王ヴァーツラフ4世(1361〓 1419/在位1378−1419)で、彼は神聖ローマ帝国ドイツ王(在位1376−1400)の地位を兼帯し、「ヴェンツェル」というドイツ名でも知られます(ドイツ王であることは、同時に神聖ローマ帝国の君主たることを意味しましたが、彼はローマ教皇から正式な戴冠を受けなかったため、「神聖ローマ皇帝」を名乗ることはできませんでした)。

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彼のためにプラハの宮廷で制作されたのが、この極美の写本で、制作年代は彼がドイツ王を退いた1400年以降のことなので、特に『ヴァーツラフ4世のための…』と冠称するのでしょう。

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内容は、全体が鮮やかな絵具と金箔で彩飾され、とにかく豪華の一言に尽きます。
天文学へのインパクトという点では、もちろんコペルニクスやガリレオの著作の方が、はるかに重要なわけですが、ビジュアルな美しさでは、彼らもこうした豪華本に一歩譲らざるを得ません。

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こうした詳しい星表と星図は、中世以降、アラビア経由で流入した天文学の新展開を物語っています。

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もちろんコペルニクス以前なので、そこで説かれる宇宙は、地球を中心とする多層天球構造です。

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そしてなんといっても、時代は占星術ブーム。
本書の多くが占星術の解説に割かれている…と想像するんですが、ここでもドイツ語の解説書に阻まれて、詳しい内容は不明です。でも絵柄からは、そんなふうに読み取れます。

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