雪華の幻灯
2021-12-26


クリスマスも終わり、今日は雪が舞い散る、寒い日曜日。
青空が見えたかと思うと、白い雲がおそろしいスピードで空を走り、また次の雪を連れてきます。

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下は雪の結晶を写した幻灯スライド。

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ただし、リアルな写真ではなくて、結晶を模式的に描いた図です。

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薄葉のフィルムをガラス板でサンドイッチしたもので、残念ながら一部破れてしまっています。本当はもっと透明感のあるスライドセットが欲しいのですが、雪の結晶を写した幻灯スライドは、世間にありそうで無いものの一つで、いまだ出会いがありません。

もちろん、そういう品が絶無というわけではなくて、例えば有名な雪の写真家、ベントレー(Wilson A. Bentley、1865−1931)は、生涯にわたって雪華スライドを製作しつづけましたが、それも現在は甚だ希少品で、以前目をむくような価格で販売されているのを見た記憶があります。まあ、雪はありふれた存在ですから、ベントレー以外の人が製作を試みてもいいし、ベントレーの複製だってバンバン作られても良さそうなのに、探してみると意外にないのは、あまり需要がなかったんでしょうか。ちょっと不思議な気がします。

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とりあえず手元の1枚をしげしげと眺めてみます。

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スライドのラベルにはイタリア語で「Fiori di neve(雪の華)」と書かれています。

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裏面にはまた別のラベルが貼られていて、こちらはフランス語で「Flour de glace(氷の華)」。まあ雪でも氷でもお好みでと思いますが、言うなればこれは「冬の華」でしょう。

このスライドの生国はイタリアかフランスかはっきりしませんが、フランスで販売を手掛けたのはパリのマゾ商店です。ネット情報によれば、店主のエリジャ・マゾ(Elijah Mazo)は、1880年ごろ光学機器と写真撮影の店を創立し、1913年にアボット・トレーニュ(Abbot Tauleigne)と組んで、屋号も「Tauleigne‐Mazo」となったらしいので、このスライドも19世紀末〜20世紀初頭のものということになります。

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100年ちょっと前、この雪華の幻灯ショーを楽しんだのは誰なのでしょう?
凍てつく夜をよそに、両親とともに暖炉の前で過ごした幼い子どもたちでしょうか。それとも雪の科学を学びながら、心はすでに教場を離れ、スケートやそり遊びに向かっていた生徒たちでしょうか。いずれにしても、そこに冬の温かい思い出を重ねて眺めたくなります。

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