ベネチアの青い空と星座神話
2021-01-23


前回の記事の枕に、ベネチアのサンマルコ広場の天文時計の写真を載せました。
時計を含む塔楼は、1490年代に建てられた美しいルネサンス建築です。

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(再掲)

あれには多少の意図があって、本棚の隅で寝ている天文時計にも、ついでに言及しようと思ったのでした。

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どうです、なかなかきれいなものでしょう。

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この文字盤は3層の円盤から成っていて、太陽と月はそれぞれ独立に回転するので、ベネチアの本家さながらの、立派な仕上がりです(もちろん自動で動くわけではありません。パーツが可動というだけです)。

そもそもこれは何か? 別にベネチア土産ではなくて、本の一部です。

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本の外箱というか、表紙というか、そこに丸窓がくりぬかれていて、そこからこの天文時計の細工物が顔をのぞかせているのでした。外箱は、縦44cm、幅33.5cmの大きさがあって、さらに厚さが10cmを超えるという、相当かさばる本です。

ただ、上で「本」と言いましたが、これは通常の意味で本の形をしていません。

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外蓋を開け、さらに天文時計の付いた中蓋を開けると、箱の中にはマット装された彩色写本の複製が12枚バラの状態で入っているという、セット物の画集です(マットサイズは40×29.5cm)。

■Herrscher des Himmels: Die zwolf Tierkreiszeichen und ihre Mythen.
 『天の統治者―黄道十二宮とその神話』
 Coron Verlag (Zurich)、2005

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読んで字のごとく、十二星座を描いた古写本の複製零葉を集めたもので、有名な「ベリー公のいとも豪華なる時祷書」から採った1枚をはじめ、主に15〜16世紀の写本を中心に、大小さまざまな絵柄を目で楽しむセットです。外箱の天文時計は、十二星座に歴史ロマンを重ねて見る、そんな現代の読者に向けた、ブックデザイナーのサービス精神に満ちた贈り物なのでしょう。

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