一定の品質のものを、安価に安定的に供給するのも立派な技術ですから、ヘミスフェリウム社やアンティクース社を貶める必要は全くありません。とは言え、その製品はやはり土産物的な色彩があって、「本物」とは懸隔があります。
そうしたリプロメーカーとは一線を画すのが、スイスのアストロラーベ作家、Martin Brunold の衣鉢を継ぐ、ドイツの
クロノス工房です(
CHRONOS-Manufaktur、
[URL])。
彼らは製品に古色を付けることを一切しません。彼らが作っているのは、「懐かしのリプロ」ではなく、「現代における本物のアストロラーベ」だからです。だからこそ、その製品はエレガントで美しい。ちょっと大げさに言うと、両者の違いは、観光地で売っている模造刀と、現代の刀工が鍛えた日本刀の差だ…というと、そのニュアンスをお分かりいただけるでしょうか。
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そのクロノス工房のノクターナルがこちら。
上述のMartin Brunold の設計になるもので、1520年ころのオリジナルを元に、新たに計算し直した目盛りを刻んであります。
これも実際に使うときは、取っ手を下にして、垂直に立てて使います。
この品で特徴的なのは、目当ての星がこぐま座の「コカブ」である点、そして最外周の目盛りは十二宮を表しているので、月日で合わせるには、更にその内側の各月の三分線(数字は書かれていません)を基準にしないといけない点です。
それ以外の操作法は、これまでの記事の内容から、贅言不要でしょう。
(ノックス・ポインタは4月7日頃、こぐま座の位置は午後8時を示しています。なお、ノックス・ポインタの他に、8時のところのギザが一寸飛び出しているのは、おおぐま座用です。おおぐま座で測時するときは、こちらを日付に合わせます。)
(木製台座付き)
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…というわけで、手元のノクターナルを一通り眺めてみました。
ノクターナルはわりと単純な器具だと思いますが、それでもここまで書いて、ようやく理解できたことも多いので、やっぱり書けば書いただけのことはあります。
(この項おわり)
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