五月の鉱物
2017-05-19


芽吹きの季節を過ぎ、今は若葉の季節です。
あの透明感のある美しい若緑を、他のモノにたとえると…と考えていて、思いついたのは、緑玉髄(クリソプレース)の色です。

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透明感はあるけれども、決して透明ではない、柔らかい緑。
明るく、みずみずしいアップルグリーン。

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かつて宮沢賢治も、落葉松の新芽の色を、この鉱物にたとえました。

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(『春と修羅』所収「小岩井農場 パート七」)

  「から松の芽の緑玉髄」

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(保育社版『原色日本植物図鑑 木本篇(U)』より)

そして、「からまつの芽はネクタイピンにほしいくらゐだ」と書いたのは、やはりその色合いに宝石の美しさを感じたせいでしょう。

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(「小岩井農場 パート三」)

賢治さんと緑玉髄の関わりは、板谷栄城氏の『宮沢賢治 宝石の図誌』(平凡社)に教えていただいたことですが、こうして改めてモノを並べてみると、何となくそこに賢治さんの心象が揺らめくようでもあります。

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   ★

美しい緑の季節に不似合いな、どろどろしたニュースに胸が塞がる思いです。
でも、あの暗い時代に光を放った賢治さんの後姿を眺め、どこまでも広がる自然を前にすれば、これからだって歩いていかれないことはないぞ…と思います。

[宮澤賢治]
[化石・鉱石・地質]

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