第2章 異人館の街 山手雑居地(北野町・山本通)
第3章 ボヘミアンの闊歩 トアロード
第4章 繁華街の古層 三宮界隈
第5章 鈴蘭燈の輝く下で 元町界隈
第6章 船長文化の開花 中山手界隈
第7章 夢のミクロコスモス 阪神間
第8章 山の麓 六甲・王子公園
第9章 静謐な歴史の街 兵庫
第10章 明るい海と山と石と 須磨・明石
終章 時の彼方から
この章題からも、神戸の魅力が尽くされていることが――西氏は「いや、決して尽くされていない」と仰るかもしれませんが――お分かりいただけるのではないでしょうか。
★
この美しい2冊の本の「衣装」を手がけたのが、画家の戸田勝久氏で、氏もまた生粋の神戸人と伺いました。その思いは、初編の北野町小路の夜景に、そして続編の昔日のトアロードの光景へと結実し、この2冊を並べることで、神戸の昼と夜が一望できる趣向となっています。
(カバー絵は表と裏で連続し、1枚の絵となっています。戸田勝久画 『神戸幻景 トアロード1928』)
そして見返しには、
彗星と並んで疾走するボギー車。
スパークする火花。
「地上とは思い出ならずや 稲垣足穂」の文字。
★
嗚呼、地上とは思い出ならずや…
著者の西氏は、2015年、本書が上梓されるのを見ずに病没されました。
この『ハイカラ神戸幻視行―紀行篇 夢の名残り』は、西氏の遺著であり、思い出であり、夢の名残りであるのです。そこに深い寂寥を感じつつ、本書の内容についても見てみます。
(この項つづく)
セコメントをする