最近出た、こんな本を手にしました。
■中地 文(監修)
『賢治童話ビジュアル事典』
岩崎書店、2016
この本は子供向きの本ですが、ふつうの子どもには買えません。
そしてまた、本屋さんの店頭に並ぶことも少ないでしょう。
なぜなら、定価が6千円もするし、主に学校図書館に置かれることを想定した本だからです。
巻末広告を見ると、版元の岩崎書店では、これまでも“「昔しらべ」に役立つ本”と銘打って、『昔の子どものくらし事典』とか、『日本のくらしの知恵事典』とか、『昔のくらしの道具事典』とかを、シリーズで出しています。賢治の事典もその一冊として編まれたようです。
たしかに、賢治作品は今や、国語・社会・理科にまたがる、総合学習にふさわしい教材なのかもしれません。
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子供向けの本とはいえ、この本はとても読みごたえがあります。
知っているようで知らなかったことを、私はこの本でたくさん学びました。なんだか急に物識りになった気分です。
たとえば、私はこれまで「やまなし」というものを、何となく知っている気になっていましたが、考えてみたら、その実物を目にしたことはありませんでした。
この事典を見ると、やまなしの写真があって、その脇に、やまなしというのは栽培品種の原種であり、日本では少なくとも奈良時代から食べられていたこと、中国では「百果の長」と呼び、その薬効を尊ばれたこと、そして東北では飢饉にそなえて、保存食として大事にされてきたことなどが、簡潔に書かれています。
また賢治作品の『やまなし』を理解する豆知識として、この「五月」と「十二月」の2つの章から成る童話は、初稿では「五月」と「十一月」となっており、イワテヤマナシの完熟期を考えれば、これはたしかに「十一月」が正しく、発表時の誤植がそのまま残ってしまったのだろう…という説が紹介されています。
「おお、なるほど!」という感じです。
「ふいご」というのも、手でブカブカやる小型のふいごは知ってても、鍛冶屋さんが使う大型のふいごの構造なんて、まるで知らずにいました。あれはレバーを押しても引いても風を送れるようになってたんですね。(ご存知でしたか?)
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「オリザ」のページを開けば、賢治が高く評価した米の品種、「陸羽132号」は、今のコシヒカリの祖父母に当る品種だと分かりますし、「赤い毛布」
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