たらふく飲み食いした後で、満足げに葉巻をくゆらす月。
(1900年頃のシガーラベル)
ブランド名の「Maaneklips」は英語でいう「Moon eclipse」、すなわち「月食」の意味でしょうが(注)、どうも月食どころか、今や丸々肥え太って、憎らしいほどです。
それにしても、何と鮮やかな石版でしょう。
何度も刷りを重ねた色版、美しい金彩銀彩、それにエンボス加工。
第1次大戦前のドイツが誇った石版技術の質の高さをうかがうに足る品です。
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ときに、なぜこれほど精巧な作が求められたのか?
そこにはメーカーの美意識ばかりでなく、あるはっきりとした理由があったことを、ウィキペディア・「
葉巻たばこ」(
[URL])のページを読んで知りました。
その理由とは、ずばり「偽造防止」。
葉巻に高級ブランドが確立すると、それを模造して一儲け企む業者も出てくるわけで、それを防ぐために、どんどん印刷精度が高まっていった…ということのようです。
以下はウィキペディアからの引用。
「シガーラベル」とは葉巻を封入した箱の裏蓋を封じた約15×22センチの紙である。当初は簡単な図柄だったが、模造品対策からキューバシガーの箱では20色もの多色刷り石版印刷や箔押し加工が行われていた。1920年代以降は写真製版印刷のラベルが用いられている。写真製版導入前の物は美術的な評価が高く、現在では石版印刷の再現が難しいことから骨董品としても珍重されている。
上の月食ラベルを見ても、この記述の正しさは素直に納得できます。
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さらに一本一本の葉巻に巻かれた「シガーバンド」にも、こまやかな神経が行き届いています。
これを「小芸術」と言わずして何と言いましょう。
三日月を偏愛する足穂氏も、この黒と金の衣装をまとったフルムーン氏には、合格点を与えてくれるはず。
【注: 些末なメモ】
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