X線管、細見
2016-01-11


(昨日のつづき)

昨日のX線管にぐっと寄ってみます。

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さらに角度を変えて、上から覗き込むと、こんな感じです。

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理解の便のため、昨日紹介した島津の『理化学器械使用法』に載っていた模式図を引用しておきます。

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手元のX線管とは、若干「角」の長さが違いますが、基本は一緒です。

まず、長い角の先の電極「A」を電源のマイナス側につなぎ、次いで反対の短い角「C」をプラス側につなぎます。すると、マイナス(陰極)からプラス(陽極)に向けて電子の流れが生じ、それが途中45度の角度に配置された金属板にぶつかって、エネルギーの一部がX線の形で外に飛び出してくる…という仕組みです。

では、中間にあって斜めに突き出している「B」の名称は何ぞやというと、本文中の説明には、

「エッキス線を得るには、第一図の如きクルックス管を用ふ。Aは陰極にして、Bは陽極なり。陰極の表面より射出する陰極線は、其焦点に設けたる対陰極Cに衝突してエッキス線を生じ、硝子壁を通じて発散す。」 (引用にあたり句読点を補いました)

…とあって、Bは「陽極」だというのですが、電子線の焦点にあるという以上、(Cではなく)Bこそ「対陰極(anticathode)」と呼ばれるもので、たぶん図中のアルファベットの付け方が間違っているのでしょう(どちらも電源のプラスにつながれているので、手っ取り早く言えば、両方とも「陽極」には違いないでしょうが)。

   ★

念のため、別の資料も見ておきます。
以下は、永平幸雄・川合葉子(編著)『近代日本と物理実験機器』(京都大学出版会、2001)からの引用です(改行は引用者)。

「X線の発明後、直ちにその医学的応用の重要性が認められ、より強力で安定的なX線を発生する努力が続けられた。

まず電子線(陰極線)に対して表面が約45度傾く金属から強いX線が発生することが分かり、X線管の陽極と陰極の間に表面が白金(後にタングステン)の対陰極が挿入された。対陰極は陽極と繋がれたが、後に両者は一体となって陽極が対陰極の形をとることになった。

また鮮明なX線像を得るには対陰極に照射する電子線を集中させてX線源を小さくする必要がある。そのために陰極表面は放物面とした。このX線管は希薄残留気体の放電によるのでガス入り管(冷陰極管)と呼ばれる。」 (p.280)


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[物理・化学・工学]

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