理系古書、健在なり
2015-12-23


2015年を回顧するニュースがあちこちから聞こえてきます。

古書検索サイトのAbeBooks からは「取り扱い高額番付・2015」みたいな知らせが届き、「うーむ」と感慨深く眺めました。紙の本は売れない…と言いながら、やっぱり買う人は大勢いて、古書マニアも健在のようです。

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このリストを見て少なからず驚いたのは、上位に名を連ねているのが、文学書の類よりも、むしろ理系・博物系古書だという事実です。この分野の人気が根強いことを知り、何となく心強く思ったので、どんな本が挙がっているのか眺めてみます(まあ景気のいい話だし、AbeBooksも怒るまい…と都合よく考えて、以下画像は寸借)。
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まず堂々第1位にランクインしたのが、イタリアで18世紀に出版された鳥類学書。

▲第1位
Saverio Manetti(著)
『Storia naturale degli uccelli trattata con metodo e adornata di figure intagliate in rame e miniate al naturale. Ornithologia methodice digesta atque iconibus aeneis ad vivum illuminatis』

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お値段は19万1千ドル、日本円でざっと2,312万円で、これはAbeBooksがこれまで扱った最高値を更新するものでした。(以下、青字はリンク先ページから引用した、AbeBooksによる説明文。)

 「本書のタイトルは、『体系的な叙述を加え、縮小及び原寸大の銅版挿絵による装飾を施した鳥類の博物学』と翻訳することができる。1765年、フィレンツェで出版され、600枚もの美しい鳥類の手彩色銅版画を含んでいる。刊行はトスカーナ大公妃マリア・ルイーザの命によるもので、完成までに10年を費やした。本書の希少性(完品は過去40年間のオークションで、わずかに10部が出品されたのみ)とともに、その素晴らしい保存状態が、本書の価値をいっそう高めている。」

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そして、第2位も理数系の本です。

▲第2位
Nikolai Ivanovich Lobachevskii (著)
『Pangeometria』

 
書名は『汎幾何学』の意。1856年にロシアで出た、非ユークリッド幾何学の創始者、ニコライ・ロバチェフスキーによる著作です。価格は第1位に大きく水を開けられたものの、それでも34,245ドル、日本円で414万円。

幾何学の発展において重要な書」であると同時に、晩年視力を失ったロバチェフスキーが、口述筆記により執念で完成させ、直後に没したというドラマチックな背景も、高値に結びついた要因かもしれません。

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[理科系古書(天文以外)]

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