珍しくて希少だから高価…とは限りません。
単に珍しいというだけなら、この手紙だってずいぶん珍しい。
なんといっても、これはあのシャルル・メシエ(1730−1817)の自筆書状なのですから。
メシエの名は天文ファンにとってはおなじみでしょう。フランスのすぐれたコメットハンターで、星雲・星団を目録化した「メシエ天体カタログ」の生みの親。(M78とか、M31とかいうのがそれで、「M」はメシエの頭文字)
「Messier souhaite le bon-jour a la M. Tenon.(拙メシエ、テノン先生に一言ご挨拶を申し述べたく)」…で始まるこの手紙、自分のことを「メシエ」と三人称で書いていますが、これは当時のたしなみだそうで、内容・筆跡からみて、この書状はメシエのもので間違いありません。宛先の「テノン先生」とは、当時の高名な外科医で、科学アカデミーでは、メシエの同僚でもあったジャック・テノン(1724−1816)。
5月5日の日付が見えますが、年次は不明。でも、おそらく18世紀末、メシエ晩年のものだろうと思います。このとき、メシエは足を患っており、手紙の冒頭には、燻蒸消毒や安息香のことが書かれていますが、その効験は知らず、患部がはれたり、吐き戻したり、なんとも不快な夜を過ごしたことをテノン先生に訴えています。
名うてのコメットハンターも、老境に入るとなかなか辛いものがありますね。
筆跡を見るかぎり、日常生活に不自由はなかったろうと思いますが、晩年のメシエは、視力の衰えにより、かつてのように彗星と向き合うことができなくなっていたと聞きます。
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…というわけで、天文と直接関係のない内容とはいえ、ある天文家の一生を考える上で、興味深いといえば興味深い。
例の賢治の地質図を買うお金で、こういうものが何十も買えるとなると、まあ、「モノの価値」の方は依然謎めいていますが、こと「お金の使い方」に関しては、はたして何が賢明な振る舞いなのか、大いに悩むところです。
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