図鑑史逍遥(10)…学習図鑑の時代
2013-10-16


大人向け図鑑は戦前から連綿として続いていますが、それらはいずれもその分野の専門家が手ずから編んだもの。いっぽう教育畑の人が手掛けた学習図鑑(専門家が監修者として名前を貸すことはあっても、実質的には小・中学校の先生と編集部員の合作でしょう)は、同じ「図鑑」を名乗ってはいても、ずいぶん性格が異なるのではないかと思います。

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さて、真に学習図鑑の名にふさわしい図鑑の登場ですが、この分野で先行したのは講談社です。昭和28年(1953)に、「講談社の学習図鑑」シリーズがスタートし、『花の世界』、『大むかしの人々』、『電気の世界』、『鳥の生活』等々が出ています(講談社の場合、書名自体は「〇〇図鑑」と名乗らないものが多いようです)。

以後、国会図書館のデータベースに従えば、以下のような順で次々に配本が始まり、昭和30〜40年代はまさに図鑑の花盛りでした。

「講談社の学習図鑑」 昭和28(1953)〜
「保育社の学習図鑑」 昭和29(1954)〜
「小学館の学習図鑑シリーズ」 昭和31(1956)〜
「北隆館の学習図鑑」 昭和33(1958)〜
「旺文社カラー学習図鑑」 昭和43(1968)〜
「学研の図鑑」 昭和45(1970)〜
「小学館の学習図鑑デラックス版」 昭和47(1972)
小学館「新学習図鑑シリーズ」 昭和48(1973)〜
「旺文社学習図鑑」 昭和51(1976)〜

こうして眺めていると、自分もずいぶんお世話になったことを思い出します。
そのうちのいくつかは、それこそ暗記するほど読んだので、とても懐かしいです。

そしてこれらの図鑑に加えて、各社から「学習百科事典」も出ていて、多くの子供部屋の本棚を占領していましたから、当時は子ども文化においても教養主義が幅を利かせていたことを強く感じます。(とはいえ、それも大半は親の願望の投影であり、当の子供はその脇で漫画やら何やらを読みふけっていることが多かったと記憶しています。かく言う私は、図鑑や百科事典も耽読しましたが、他方漫画も相当読んでいたので、ちょうどバランスが取れたような次第です。)

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[理科系古書(天文以外)]

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