天気晴朗なれども、昨日も今日も冷えこみます。
記事の書き方を忘れないように、ぼちぼち話を進めます。
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時計屋の店先に飾られていた星座の図。
<サイズ>については、前回の記事で書いたように、円形星図ならば直径4〜50cmクラスの大きさだと想像します。まあ、絶対的に「大きい」とも言い難いですが、脇に置かれた星座早見盤よりはずっと大きいですし、店先の飾り付けとしては、それぐらいの方が扱いやすいかもしれません。
次に、その<内容>を考えてみます。
もう一度原文に帰ると、
「〔…〕空じゅうの星座を ふしぎな獣や蛇や魚や瓶の形に書いた大きな図〔…〕ほんとうに こんなような蝎だの 勇士だの そらにぎっしり居るだろうか、ああぼくはその中をどこまでも歩いて見たい」
とあります。
ここに登場する星座の候補を、順不同で挙げてみます(黒は黄道星座、青は黄道よりも北、赤は南の星座)。
▼獣 (しし、おうし、おひつじ、やぎ、やまねこ、こじし、おおぐま、こぐま、りょうけん、きりん、ペガスス、こうま、こぎつね、おおかみ、おおいぬ、こいぬ、うさぎ、いっかくじゅう)
▼蛇 (へび、うみへび、みずへび)
▼魚 (うお、みなみのうお、とびうお、かじき)
▼瓶 (みずがめ)
▼蝎 (さそり)
▼勇士 (ヘルクレス、ペルセウス、オリオン)
候補が1つしかない「瓶」と「蠍」は即座に決定です。したがって、この星図に黄道12星座が描き込まれていることは確実。…となると、「魚」も「うお座」が有力ですし、「獣」はたくさんいるので1つに決まらないにしろ、獅子や牡牛の姿がそこに含まれることも、確からしく思えます。
「勇士」候補のうち、オリオンは勇士よりは「狩人」のイメージなので、ここではペルセウスないしヘルクレスが穏当かも。(ちなみに、賢治が愛読したとされる、吉田源治郎著『肉眼に見える星の研究』には、「オリオンは…世界に比無き偉い猟師」、「ペルセウスと云ふ勇士」、「ヘルクレスは…古代の半神のうちでも尤も名のある勇士」と叙述されています。)
とすると、この星図は黄道から北を表現した北天星図ということになりますが、即断は禁物。物語中に登場するのは以下の星座ですから、銀河鉄道の旅は、むしろ南に偏っています(その範囲は、だいたい赤緯+40度から−65度にわたります)。
はくちょう、わし、いるか、くじゃく、インディアン、つる、さそり、ケンタウルス、みなみじゅうじ
ジョバンニは、華麗な星座絵に惹きつけられ、夢の中でこれらの星座を縫って旅しました。とすれば、ジョバンニが見た星座絵には、北天のみならず南天の星座も含まれていなければならないはずで、結論をいえば、そこには南北両天の星座 ―文字通り「空じゅうの星座」― が描かれていたと思います。
(長いので、ここで記事を割ります。)
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