古書の来歴…寒夜に北海道を思う
2012-12-19


各図書館はしばしば蔵書整理を行うので、古書市場には図書館から放出された本が、それこそ無数に流通しています。しかし、どの図書館から出た本であるかは、あまり重要な情報ではないのか、古書カタログでも大抵は「Ex-library」としか書かれていません。したがって、実際に本が手元に届いて、初めて予期せぬ驚きを感じることもしばしばです。

一昨日の銀河の写真集には、スミソニアン協会図書館と米連邦議会図書館のスタンプがありました。

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だからどうだ…ということもないのですが、「この本は一時あの名高い場所にあったのか」と思うことで、なにがしかの感興を催すこともないではありません。

   ★

日本で購入した本でも、似たようなことは起こり得ます。
例えば、以前、札幌の古書店を通じて古い地図帳を購入したことがあります。

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(John Bartholomew(編)、The Student’s Atlas. 1871)

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(カラフルに彩色されたスイスの地図)

古書店のカタログには何も書かれていませんでしたが、表紙を開くと…

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そこには「開拓使」の朱印がポンと捺されていました。
そんな歴史的存在が(北海道開拓使が置かれたのは明治2年〜15年までです)、平然と本の中から顔を見せたことに、少々うろたえました。

この地図帳は、文字通り学生用のコンサイス版なのでしょうが、ひょっとしたら北海道の近代化に少なからず功があったのかも…。いや、それどころか、この本には北海道の歩みそのものがギュッと詰まっているのかもしれない…。

べたべた押された蔵印を見ていると、そんな気さえしてきます。

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(「北海道庁図書之印」。北海道庁は明治19年(1886)の設置)


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