フェルメールの「天文学者」に見える謎の図 (前編)
2012-11-16


お腹を下しました。寒さのせいか、胃腸風邪か、とにかく用心しようと思います。
皆さんもどうぞお気をつけて。

   ★

さて、「謎解き」を、別の話題でも続けます。

日本でも人気の高い17世紀オランダの画家、ヤン・フェルメール(1632−1675)。
最近大きな展覧会が続いたことで、その絵にいっそう注目が集まっているようです。
彼が30代半ばに描いた作品に「天文学者」という絵があります。天球儀に手をかけ、じっと見入る1人の男を描いたもので、現在はルーブル美術館の所蔵です。
 
禺画像]
(ヤン・フェルメール作、「天文学者」。1668年、油彩、カンヴァス、50×45cm。)

この絵は大層有名なので、既にいろいろ考証が加えられており、画中の天球儀は、ヨドクス・ホンディウスが1600年に制作したものであり、また机上に開かれた本は、アードリエーン・メティウスという人の『天文・地理学集成 天球儀と地球儀を利用した天文術基礎研究及び地理記術』の第3巻で、しかもその第2版であることも明らかになっています。また背後の壁にかかる絵は、フェルメールの他の作品にも登場する「モーゼの発見」です。さらに最近になって、天球儀の足元にちらりと見えるアストロラーベは、ウィレム・ヤンスゾーン・ブロイ作のものと判明したのだとか。

実はこの話題、以前S.Uさんから頂戴したコメント([URL])に触発されたもので、上に挙げた各種の考証は、S.Uさんに教えていただいた、Jonathan Janson氏の「The Complete Interactive Vermeer Cataogue」というWEBサイトに書かれた「天文学者」に関する解説([URL])が主なソースになっています。

   ★

さて、ここで問題にしたいのは、天球儀の背後、家具の正面にかかっている星図(?)についてです。そこまでいろいろ分かっているのであれば、この図の正体も、すでに明らかなのかと思いきや、上記Janson 氏によれば、「この見慣れぬテクニカルな図面に関しては、3つの円形図がある種の立体投影図だと推定されているものの、あまりよく分かっていない。天球図(planisphere)だろうと考える歴史家もいる」という状況なのだとか。
 
禺画像]
 
禺画像]
(「天文学者」に描かれた謎の図。 上:オリジナル画像、下:コントラストを調整したもの)

フェルメールがこの場面に、空想的な図を描き込むとは思えないので、この図についても、きっと何かモデルがあるのだと思います。しかし、私にも具体的なアイデアがあるわけではないので、この件について天文学史のメーリングリストで質問をしてみることにしました。「この図は現実に存在する図なのでしょうか?存在するとすれば、そのソースは何なのでしょう?」
 

続きを読む

[星図]
[天文余話]

コメント(全2件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット