月世界今昔
2009-06-11


禺画像]
本日未明、「かぐや」月面に落下。
大活躍、お疲れさま。

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さて、今年はアポロの月着陸40年ということで、いろいろ催しがあると思ったのですが、どうも世間はそんな気分ではないようで、一部を除いてほとんど話題にもならないようです。私も辛うじて当時の記憶を留めているぐらいなので、偉そうなことは言えませんが、でも当時の熱気を考えると、本当に嘘のようです。

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写真は「天文と気象」1964年10月号。
表紙を飾るのは「月に近づくアメリカの『アポロ宇宙船』の想像図」です。

地人書館の「天文と気象」誌は、1949(昭和24)年1月に創刊された、当時わが国では唯一の天文ファン向け商業誌。後の「月刊天文」誌の前身にあたります…と言っても、同誌もすでに休刊となって久しいので、まことに時の流れとは容赦のないものです。(ちなみに誠文堂新光社の「天文ガイド」誌は、この翌年、1965(昭和40)年の創刊です。)

一体に60年代の「天文と気象」誌は、東西冷戦を背景にした宇宙開発ブームに傾斜した誌面作りで、その手の特集が目立ちます。この号も、月面着陸までまだ5年もあるのに、「特集“月の科学”」を組んで、大いにブームをあおっています。

中でちょっと驚いたのは、「火星、金星への飛行は“竹トンボ型”宇宙船で」という記事(p.49)。

「米ロッキード社の科学者ベン・P・マーチン技師は、月世界を征服したあとの目標として、火星探検の可能性を早くも検討しはじめており…」「目下予定されている計画を進めてゆけば、1970年には人間が、火星、金星に向って飛び出せることはほぼ間違いないと云っています。」

記事は、NASAとロッキード社が目論んでいる計画の細部を自信満々に解説し、「1970年のクリスマスに地球を出発、翌71年11月10日火星を通過、72年6月7日に金星に達し、同年8月21日に帰還」というスケジュールを報じています。

後知恵でこういう記事を笑うのはよくないと思います。よくないとは思いますが、でも、やっぱり一寸おかしい気がします。まあ、これもささやかな「未来人」の特権でしょう。

ここでひとつ不思議なのは、「もし1960年代の人が2009年の社会を見たらどう思うか?」という問いで、一瞬自信を持って答えられそうな気がするんですが(何と言っても、自分自身がかつては1960年代の人だったわけですから)、でもちょっとあやふやです。誰も銀色の服を着てないし、空飛ぶ車もないし、月への修学旅行もないので、たぶん物足りなく思うんじゃないかと思いますが、でもやっぱり驚くような変化も一方にはあるんでしょうね。いったい何に驚くんでしょうか。

【6月12日追記】

考えてみたら、上の問いは答えられなくて当然ですね。
問いが意味するのは、「60年代の大人が今の社会を見たら…?」ということであり、自分は60年代の大人ではないのですから。「60年代の幼児が今の社会を見たら…?」ならば、自信を持って答えられます。たぶん、彼は次のように思うんじゃないでしょうか。「子供がいない!お年寄りばっかりだ!」
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