石田五郎 『天文台日記』…星のダンディズム
2006-11-01


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★石田五郎著 『天文台日記』 (筑摩書房、1972)
 ちくま少年図書館シリーズの1冊。

昨日トコさんにコメントをいただいた本です。一昨年文庫化されていたんですね(中公文庫BIBLIO)。知りませんでした。日本の出版界もやるな、と嬉しくなります。今アマゾンで見たら、文庫版の表紙も洒落ていました。ついでながら、アマゾンのカスタマーレビューも大いに吉。

* * * * *

出版時、著者は48歳。その3年前に岡山天体物理観測所の副所長に任ぜられています。本の内容は天文台に起居する科学者たちの日常を、1年間の日記形式で描いたノンフィクション。

「197 * 年1月1日 快晴 せまい分光器の観測室内で夜明けをむかえる。露出計(モニター)の目盛りを照らす小さいランプ以外、すべてのあかりを消した暗い室内で、ひとり椅子にすわりファインダーの視野の監視をつづけていたが…」

という書き出しで始まり、大晦日の晩、一人モニターの前でアポリネール作詞のシャンソンを口ずさむシーンで終わります。

「レ・ジュール、サン・ヴォン、ジュ・ドムール 日はすぎ去りて、とどまるはわれ…」

実にかっこいい本です。山行記や航海記に通じる「男のロマン」と、学問の先端をゆくハイブロウな雰囲気が、子供のころの科学者へのあこがれを甦らせます。

本もそうですが、著者の生き様もまさに「ダンディ」と呼ぶにふさわしいものでした。
[天文古書]
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