ルナ・ソサエティのこと(5)

コメント(全4件)
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S.U ― 2022-10-16 08:17
これは、『遊』を買い占められた甲斐がありましたね。
『遊』の最盛期は、タルホ御大がお亡くなりになった頃だと認識しております。当時、リアルタイムで書店に出ているのは知っていましたが、これまた当時は宗旨が違い、買うことはありませんでした。
 さて、私は御大の物故のすぐあと、タルホの愛読者になったのですが、タルホの月好きは幼少から老年にアポロ時代まで息が長いですね。しかし、文学の中で出てくる月狂いの結社とか儀礼とかを扱ったものは、外国のものはともかく、日本の話はぜんぶハッタリですよね。ですから、今回の件も最終的には、松岡氏のハッタリに帰するのだと思っていたら、まったくそうでもなかったようですね。

 でも、可能性としては、やはり、松岡氏と工作舎の「合同工作」によるハッタリで、名前の挙がっている奇妙な人たちを呼んで小道具を並べて酒を飲む会はあったにしても、それを「ソサエティ」の会合と他の出席者はまったく捕らえていなかったということもあるのではないでしょうか。酔いが回れば、松岡氏は月や小道具を持ち出して儀礼的な話題を振るが、他の出席者はサカナは何でもでもいいので付き合った、と言ったらお月さんに怒られますでしょうか?

 さて、半分冗談はさておき、1970年代後半はどんな時代だったか? アポロ計画が1972年に終わり、米ソ宇宙競争も1975年に終わり、ユリゲラーらが火を点けたオカルトブームやUFOブームも一段落、経済もオイルショック後の不況からなんとなく立ち直り始めて、比較的もぬけ状態の時代でなかったかと考えます。私が思うに、当時、そのような好き者の会合のブームが起こるとはあまり考えられません。あるとしたら、一つの可能性として、これは、そこに来ている酔狂な人たちの個々の心の中に芽生えた復古主義で、それは栄光の時代を築いたタルホ御大の物故がきっかけになっているということかなと思います。
 今のところ、ものごとをよく知らない者の身も蓋もない推測ですみません。
玉青 ― 2022-10-16 22:12
>比較的もぬけ状態の時代…好き者の会合のブーム

この辺はなかなか総括が難しいですが、むしろもぬけ状態の時代だったからこそのブームではなかったか?…というのが、とりあえずの私見です。

1970年代の終わりというと、私が子供時代から決別して、ようやく若者の入口に入ったばかりの頃ですから、実体験は乏しいのですが、その後得た知識も援用すると、当時は学生運動の退潮とともに、熱い政治の時代が終わり、いわゆる「しらけ世代」が台頭した時代ですよね。まあ、あまり単純化して物を言うのも危険ですが、一般的傾向としてはたしかにそう言えると思います。

そして、若者たちはたしかに政治的にはしらけていましたが、若者特有のエネルギーは依然健在で、それが政治運動以外のはけ口を求めた結果として、当時は「趣味による紐帯形成」が非常に高揚した時代だったと思います。それは一方ではサブカルブームを生み、さらにその勢いはメインカルチャーをも呑み込んでいきました。特に、前代の若者とは違って、70年代末の若者は商業主義と対峙するのではなく、むしろそれを積極的に利用しましたから、ときに「時代の寵児」と呼ばれるような起業家も生まれました。

私が鮮明に思い出すのは、学生起業家による「ぴあ」や「アスキー」の創刊で、彼らは雑誌の成長とともに、時代の偶像ともなりました。また、後に「おたく第1世代」とよばれる人たちが、最初のコミケを始めたのもあの時代ですよね。

松岡氏が工作舎を立ち上げて成し遂げたことも、まあやっている内容は全然違うんですが、私の目にはそうしたムーブメントと重なって見えますし、そういう構図の中で見て初めて見えてくるものがある気がします。
S.U ― 2022-10-17 08:03
>サブカルブームを生み、さらにその勢いはメインカルチャーをも呑み込んでいきました

 サブカルのメイン化というと形容矛盾ですが、少なくとも若者の間でサブカルの大衆化が起こるというのは、たしかに「もぬけの時代」の特徴といえるかもしれませんね。これは、1970年代後半に限らず、終戦直後の新興宗教やテロまがい事件の社会の受容、おそらくは最近の長期不況でもアニメやネトゲで起こっていると思います。そのような中で、1970年代後半〜80年代初頭にかけては、「(疑似)学問のサブカル」の大衆化だったといえるかもしれません。疑似学問というと、普通は、文学、人文科学にでしょうが、当時はこれが自然科学、社会科学(もちろん疑似)まで勢力を伸ばきたように思います。これはもともとはオカルトブームに起因するものかもしれませんし、マンガやSF小説も貢献したかもしれません・・・とこれが、当時、少年から青年に入り始めた私の印象です。

 その中でも、1970年代後半は、もぬけのサブカルの中でもエアポケットの時代だったと思います。サブカルが起業に成功する前段階の時代で、それでもマンガ誌から始まった「同人誌」が他の「学問」についても大衆化し始めた時代で、工作舎はその多少大がかりの皮切りのようなものだったのかもしれません。もはや記憶があいまいですが、当時、書店を歩いていた私の印象にはそれが合うような気がします。工作舎のあとは、マイナーな同人誌が何種類もメジャーな書店に並ぶようになったと思います。それが、なぜ「月狂い」かという宗旨の問題は残りますが、いずれにしても、「同人」の大衆化だと思えば、そのへんは復古だろうと革命的新機軸だろうと大きな問題ではないことになるような気がします。でも、「天文文学」の立場からは重要でしょうから、今後も考えてみたいと思います。
玉青 ― 2022-10-21 07:44
どうぞよろしくお願いします。
当時のことは、いろいろな角度から、いろいろな語りが可能だと思いますので、またおいおい振り返ってまいりましょう。

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